ノギスなどの測定器を校正することで国家基準の証明になります

測定器に校正の作業が必要な理由

ノギスなどの計測器・測定器は精密な部品によって構成されています。部品は気温や湿度の変化により膨張や縮小が見られます。膨張や縮小はわずかかもしれませんが変形を積み重ねると経年劣化につながります。測定に影響を及ぼし本来とは違う誤差が生じてしまいます。誤差は日本工業規格(JIS)の用語で「器差」と呼ばれます。例えばスペクトラム・アナライザが劣化すると内部基準周波数や周波数応答などに影響が出ます。それだけでなくコネクタの締め方や磨耗なども器差につながるのです。ノギスなどに器差が生じているのにそのまま測定し続けると測定対象の製品の品質や性能が維持できません。また、国が定める規格に適合する証明も出来ないのです。

周期は定めていないが年に1回が理想です

測定器が示す値が本来の正しい値と差が生じているかどうか調べるのが「校正」と呼ばれる作業です。正確さを知るだけでなく、製品の品質や性能を維持することにもつながります。製品の不具合や信用を失うリスクを避けるには大きな意味を持つ作業になります。「JISZ8103」による定義では、測定器の値と標準の値との関係を確定する作業となっています。あくまで現状の測定器を把握することであります。万が一ずれていても、修正したり機能を改善するメンテナンスの概念は含まれていません。実施したからといって測定器の精度や機能の向上に繋がらない点は念頭に入れましょう。ISO(国際標準化機構)では実施する周期や期限は定めていません。もし測定器を使用して定期的にするならば、機器の校正周期を決定します。これは各メーカーが推奨している周期を標準とします。多くのメーカーは年に1回行うことを推奨しています。定期的に行えば、測定器の状態を逐一把握することができて高い精度の確保に繋がります。

使用する測定器によって測定する環境も違う

測定質でノギスなどの測定器を測る際の環境条件は使用する標準器で違います。例えば長さを測るブロックゲージでは測定室の環境条件は20℃としています。室温だけでなくブロックゲージそのものの温度も基準とします。室温の影響で伸び縮みしていれば、正しい値を把握することはできません。自社でも可能ですが、スペクトラム・アナライザなど難しい計測機器は専門業者に依頼します。専門業者はJCSSやA2LAなど専門機関から認定を受けている所を必ず選びましょう。業者に認められれば認定機関の校正証明書が交付されます。取得更新のトレーサビリティ証明書、標準器類の体系図など他の詳細な資料を用意する必要はありません。企業にとってこの作業は重要な事項となっています。製品が不具合を起こしたり、企業の信頼を損ねないよう危機管理として定期的に実施することが重要です。国家基準だけでなく国際的な基準を満たしている証明になるのです。